日本の水道水、水質基準はどうやって決まっているのか?
国は、国民が安全に水道水を飲めるように水質基準を定めている。もうちょっと詳しく言うと、水道水の水質基準は、「水道法」という法律で決まっていて、水道の水質基準が守られているか監督しているのは厚生労働省になっている。
じゃあ、水質基準の内容は、どうやって決まっているのか?って言うと、次の3つのことを基準にしているらしい。
(1)今までの基準
(2)世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドライン
(3)諸外国の状況と日本の検出状況
それでは、(1)(2)(3)それぞれについて詳しく見ていこうと思う。
今までの水質基準
まあ、これは当然なのだが、新たな水質基準を作る時には、「今までどんな基準で水質を管理していたか?」ってことを参考にしている。実際、水質基準というのは
どんどん新しく変更されている。例えば、新しい発見があったときとか、新しい農薬が売られるようになった時など、毎年ちょっとずつ変更しているのだ。多くの場合は基準をより厳しくしたり、新しく検査項目を追加している。つまり、安全な飲水のために、基準はどんどん厳しくなるようになっているのだ。
世界保健機関(WHO)の飲料水水質ガイドライン
水の中には、色々なものが含まれている。特に、日本の水道は川の水を水源にしていることが多いので、不純物の処理がものすごく重要になる。
水に含まれている物質の毒性の評価は、世界中の科学者が色々と研究をしていて、その結果は論文で公表されているのだが、WHOはそれらの論文のデータを参照して、安全な量を決めているのだ。もちろん、色々な人が色々な実験をしているので、色々のデータが存在する。WHOは複数の論文をキチンと調べて、安全な値を決めているのだ。
[icon image=”arrow4s-b-r”]動物実験と疫学調査から無毒性量(NOAEL)を求める
では、その「安全な値」ってどうやって決まっているのだろうか?
まず、一番信用されているのは動物実験の結果だ。Aという物質の毒性を調べるために、ラットに2週間とか、3カ月とか、1年とか、長い時間与え続けて、物質の影響が出ていないかどうか調べる実験を行っているのだ。その実験と体や細胞の観察から「体の取り入れても悪影響が出ない最大量」である無毒性量(NOAEL)を求めているのだ。
動物実験以外には、疫学調査という調査方法がある。例えばAという物質を吸い込んだり、食事に混ざって食べてしまったが大勢出てしまった時に、その人達の体調を追跡調査して、どの程度の量から悪影響が出始めるのかを調べることができるのだ。
[icon image=”arrow4s-b-r”]耐容一日摂取量(TDI)を求める
次に、動物実験や疫学調査から無毒性量(NOAEL)を基にして、それを毎日摂り続けても「人体に悪影響が出ない量」を考えるのだ。この量のことを専門用語で耐容一日摂取量(TDI)と言う。
じゃあ、耐容一日摂取量ってどうやって求めるのか?って言うと、無毒性量をさらに100や1000で割って求める。動物実験や疫学調査のデータは、「実際の人で試した値」では無いので、もしものことが無いように100や1000で割っているのだ。(※この割る数字のことを不確実係数や安全係数と呼んでいる。)
こうやって、動物実験や疫学調査によって「耐容一日摂取量」を求めることで、WHOは水質ガイドラインを定めているわけだ。
諸外国の状況と日本の検出状況
諸外国でも、水道の水質基準はちゃんと決められている。で、日本だけでなく諸外国も、新しい発見に合わせて水質基準をどんどん変更している。何か新しい問題が起これば、それに合わせて対策を取らないとならないからだ。
ということは、諸外国の水質基準の変化を追跡していれば、日本で何か問題が起こる前に対策が出来る。そのため、厚生労働省は外国の水質基準の動向にも注意をしているのだ。主に参考にしているのは、アメリカとEUの水質基準だ。
・・・しかし、これだけ色んなこと考えて水道の水質基準を決めているのに、何故「水道水は危険!」的な話題がマスコミで取り上げられるのだろう?「危険」の根拠としてマスコミに取り上げられる物質がいくつかあるので、水道水に実際にはどれくらい含まれているのだろうか?という点について、次は詳しく見ていくのだ。