水道水の硝酸性窒素及・亜硝酸性窒素は危険?ミネラルウォーターに変えるべき?

硝酸性窒素や亜硝酸性窒素のことを聞いたことがあるだろうか?いままで気にも留めてこなかったが、ネットで、水道水について調べてみると、硝酸性窒素や亜硝酸性窒素について、たくさん書いてある

その内容を要約してみると、
水道水に硝酸性窒素及・亜硝酸性窒素がわずかに含まれているけど、それって危険なの?
やっぱり、ミネラルウォーターに変えた方が良いかな?
ということなのだ。

「水道水は飲みたくない」という意見も、「大きな問題では無い。水道水は飲んでも大丈夫だ!」という意見と、情報がマチマチで混乱してしまった。そこで、ちゃんと自分で調べてみたのだ。

硝酸塩と硝酸塩窒素、亜硝酸塩と亜硝酸塩窒素って何?

まず、分かり難くなっている原因は、名前が2つあることだ。厚生労働省の表記を見ると硝酸性窒素や亜硝酸性窒素と書いてあるが、別の書籍をみると硝酸塩や亜硝酸塩と書いてある。同じなのか違うのか、正しいのか間違っているのか、分からなくなってしまった。そこで見つけのが、この説明だ。

「硝酸性窒素とは、硝酸塩に含まれる窒素のこと」

要するに、硝酸性窒素というのは硝酸塩の一部で、亜硝酸性窒素というのは亜硝酸塩の一部だってことだ。とりあえず、水道水の安全性を素人の我々が調べる程度なら、「硝酸性窒素」≒「硝酸塩」、「亜硝酸性窒素」≒「亜硝酸塩」って考えて良いと思う。

ここから先は、硝酸塩と亜硝酸塩の言葉で説明をしていくぞ。

硝酸塩、亜硝酸塩の毒性について

この硝酸塩、亜硝酸塩という物質がどのくらい含まれるか?ってことも、水質基準の1つになっている。

ところで、この硝酸塩・亜硝酸塩、意外なところに使われていた。なんと食品に使われているのだ。食品衛生法よると、硝酸塩は食品添加物としてチーズ、清酒、食肉製品への使用が認められている。何のためかというと、発酵調製や発色のためだそうだ。その分量は、「チーズの場合は0.20g/L、清酒では0.10g/L、食肉製品では亜硝酸根としての最大残存量0.070g/kgが最大限度量」と決められているのだ。

うーん、食品に加えても良い程度の危険度しかないということか?

実は、硝酸塩・亜硝酸塩による被害は、2つ指摘されている。一つはメトヘモグロビン血症という病気を引き起こす可能性だ。もう1つは発がん性物質に変わる可能性だ。それぞれ詳しく見ていこう。

硝酸塩、亜硝酸塩によるメトヘモグロビン血症

まず、硝酸塩・亜硝酸塩がメトヘモグロビン血症を引き起こす可能性から説明する。赤血球の中には、酸素と結合する働きをするヘモグロビンと呼ばれる色素がある。このヘモグロビンがあるから、人間は呼吸して、酸素を血液の中に取り込むことができる。ヘモグロビンが酸素を運んでくれなければ、我々は生きていけない。

このヘモグロビンが、酸素と結合できない形に変わってしまったものをメトヘモグロビンという。このメトヘモグロビンは、健康に生活している人の体の中でもあって、ヘモグロビンの1~2%程度は出来てしまっている。でも、メトヘモグロビンの割合が低いうちは全く問題なく、健康でいられる。ところが・・・メトヘモグロビンの割合が、1~2%以上になってしまうと問題が生じて、この状態をメトヘモグロビン血症という訳だ。

メトヘモグロビン血症になると、酸素を運んでくれるヘモグロビンが減ってしまうので、血液の酸素を運べなくなってしまう。結果として、唇の色が青くなったりといった、酸欠状態を示す症状が現れ、最悪の場合は死に至ってしまう。メッチャ怖いのだ。

このメトヘモグロビン血症が、飲食物中に含まれる硝酸塩や亜硝酸塩によって引き起こされる可能性があるのだ。胃の中の細菌の働きで硝酸塩が亜硝酸塩に変化する。この亜硝酸塩やそこから発生する化合物によって、赤血球の中のヘモグロビンをメトヘモグロビンに変えてしまい、メトヘモグロビン血症を引き起こしてしまうとされている。

ただし、このメトヘモグロビン血症を発症が確認されているのは、生後6か月以内の乳児や、胃に何らかの病気を持つ人に限られている。
・・・っていうか、乳児を持つ親は、気をつけないとならないという事なのだ!

では、どうして乳児はメトヘモグロビン血症を発症するのだろうか?

これは、乳児の胃の酸性度が低いからだ。胃の中の酸性度が低いと、細菌が活発に働き、硝酸塩から亜硝酸塩が生成されやすいと考えられている。だから、乳児はメトヘモグロビン血症になる可能性があるわけだ。大人でも、胃に何らかの病気を持っていて酸性度が低ければ、同様のことが起こる。

ところが、生後6か月以上になり、離乳食がはじまるころになると、胃の酸性度が上がってくる。すると胃の中の細菌はいなくなってしまうので、メトヘモグロビン血症にはならなくなる。だから、メトヘモグロビン血症の発症は、生後6か月以内の乳児や胃に何らかの病気を持つ人に限定される訳だ。

以上の状況を考慮して、水道水に含まれる硝酸性窒素、亜硝酸性窒素の量について、日本の水質基準では以下のように定められている。
・硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素の合計が10mg/Lを超えない
・亜硝酸性窒素の値が0.04mg/Lを超えない

諸外国の状況と比べてみると、

地域 硝酸性窒素 亜硝酸性窒素
WHO 10mg/L 0.06mg/L
EU 10mg/L 0.15mg/L
アメリカ 2mg/L 0.3mg/L
日本 10mg/L 0.04mg/L

比較すると、日本の基準は諸外国と比べて同等の基準であると分かるのだ。

硝酸塩、亜硝酸塩の発がん性について

硝酸塩、亜硝酸塩の発がん性に関してだが、これも相当に分かりにくい。

まず勘違いしてはいけないのが、硝酸塩も亜硝酸塩もそれ自体には発がん性は認められていないということだ。発がん性があるのはニトロソ化合物というもので、これは動物実験で発がん性が確認されている。国際がん研究機関 (IARC)では、ニトロソ化合物をGroup 2Aの「人に発がん性がおそらくある」に分類している。硝酸塩と亜硝酸塩は、胃酸や胃の中に入っているものと化学反応を起こし、このニトロソ化合物になってしまう。そのため、規制の対象となっているのだ。

では、水道水の中の硝酸塩・亜硝酸塩をゼロにすれば解決するかというと、そうではない。実は、食べ物、特に野菜に硝酸塩と亜硝酸塩は大量に含まれているのだ。また、ニトロソ化合物の原因になるのは硝酸塩だけでなく、食べ物に含まれる他の窒素化合物からも生成される可能性が指摘されている。

例えば、野菜に含まれる硝酸塩の量は次のようなデータがある。

【野菜に含まれる硝酸塩の量】(食品安全委員会より)

地域 野菜 含まれる硝酸塩の量
日本国内
(昭和63年)
ホウレンソウ 3560mg/kg
サニーレタス 1230mg/kg
チンゲンサイ 3150mg/kg
EU(2008) ダイコン 1416mg/kg
セロリ 1103mg/kg
ホウレンソウ 1066mg/kg

上記の野菜は、硝酸塩の含有量が多いものだが、実は、水道水に比べると硝酸塩の量が桁違いに多いのだ。実際に日本人の1日の硝酸塩の摂取量の調査もされている。平成12年の調査では、1日平均的して232 mgの硝酸塩を摂取しているという結果がある。この232mgの内、80%以上(186mg以上)は生鮮食品に由来しているという結果も出ている(公益財団法人 日本食品化学研究振興財団のホームページより)。

硝酸性窒素及や亜硝酸性窒素を理由に、水道水からミネラルウォーターに切り替える必要はない

水道水に含まれる硝酸塩の量は地域によって違うのだが、0~2.2mg/L程度のところが多い。これは基準値の5分の1程度だ。水道水の水2Lを飲んだとしても、硝酸塩の量は最大で100mgだ。つまり、水道水よりも、野菜や果物などの生鮮食品から取り入れる硝酸塩の量が圧倒的に多いことが分かっている。もちろん、野菜は健康に良い効果があるのが分かっているので、「硝酸塩を取りたくないから」と言って野菜を減らしてしまっては逆に不健康になってしまう。

水道水に含まれる硝酸塩に関しては、恐れすぎない程度に気を付けていれば良く、わざわざそのために、ミネラルウォーターに切り替える必要はないと思うのだ。

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